「過労死をお望みですか?」と平然と言ってみたら、クライアントが思わぬ動きにでた!
世の中には、無謀なことを平気でのたまうクライアントが存在します。しかも、少なくない!
今回は、と~んでもない指示をひょうひょうと言うクライアントの横暴さに、思わずブチ切れてしまったお話。でも顛末は思わぬ方向に…
横暴な担当者と姿を出さない上司
そのクライアントは、態度が横柄で話を聞かないことで有名な方でした。しかも最悪なのは、それはあくまでも窓口の人間であって、その後ろには打ち合わせに出てこない上司がいるということ。
横柄君は人の話をろくに聞かず、適当なことを上司に報告するため、筋道が通らない修正がたびたび繰り返され、
「そこを修正をすると、今回の企画の趣旨が変わってしまいますけど?」
といってものら~りくら~り。そして最終的には、「上が変えろっていってるんで」という言葉を伝家の宝刀かのように振り下ろす人です。
が!!
趣旨からずれてしまえば、企業としても意味がなくなるので再修正して元に戻るとか、さらに修正ということを繰り返していました。
そんなこんなな状況で、私は「も~受注は無理。この仕事で最後にしよう」と思っていたわけです。
夜8時にでた修正指示内容に、「はぁ?」
その最後の仕事は、会報誌の制作。私はディレクションと一部のライティングを担当していました。
いつものように、のらりくらりの指示と確認を受けながら、やっとの思いで最終OKをもらい、いよいよ明日は印刷に出すぞ!というタイミングで電話が鳴ります。
「あ~、夜に申し訳ないんですけど、修正してもらいたい場所があるんですよ」
私は不吉な予感を感じながら、「どこですか?」と聞くと・・・。
「今まで、赤系の色を多用してもらってきたんですけど、イメチェンしたいんで寒色系に変更してもらえますか? あと、取材先から変更希望があったんですけど、伝えるの忘れてました。今から送ります」
この連絡があったのは夜の8時。
ふざけんなよ!と思う言葉を無理やり飲み込んで、ひとまず修正指示を待つことに。
5分後、送られてきた内容は、「記事中にネガティブな印象を与える内容が散見されるので、すべて削除し、別の内容に書き換える」・・・のみ。
3000文字弱、3ページにわたるインタビューの修正です。原稿を書く前にも、初稿を出す段階でも、「ネガティブな内容が多くなるので、修正の必要があれば書き換えます」と伝え、二稿、三稿と重ねたはず。
この段階でその指示は何?なめてんの?
深呼吸ののち電話をかけました。
・色の変更は簡単なものではないので、時間かかるよ!
・文章の修正はやるにはやるけど、前々から確認を重ねてきたことなのになんで今?このタイミングなら、具体的な指示出してよ!
すると、驚きの返事が。
「上の指示で、発行日は変えられないんで、明日の朝までにやってもらわないと困るんすよね~」
さて、ここで私の脳内で、ぷっち~ん!!!!と何かが切れる音がしました。
こいつじゃ話にならん!と思い次の行動に・・・
「わかりました」
と電話を切り、再度深呼吸をして、名刺ホルダーから名刺を出し、再度電話しました。
相手は、横柄君の上司。
内容はこれまでの経緯と先ほどの指示内容。それを実行するのに要する時間。
「2日寝ずにやれば発行日には間に合いますが、御社は過労死をお望みですか?」
まぁ、2日寝ないくらいで過労死はしないんですが、あまりの理不尽さを伝えるために、そういうしかなかったんです。
上司は黙って聞いていたので、速攻で仕事を切られるかと思っていました。でも、それは覚悟の上。それほどの無茶だったのです。
上司は紳士だった!
沈黙の後、上司は話をしだしました。
「大変申し訳ないことをしてしまった。原田さんとは長く仕事をしていきたが、報告を聞く限りでは問題を感じてなかったし、成果物にも満足してきた。横柄君とペースが合う人間は珍しく、原田さんは経験があるのでうまくいっていると信じていた。そんなに無理をさせていたとは・・・」
しかも、寒色系にする話は一か月以上前に決まっていたことや、インタビュー記事がネガティブになっているのは了承済みであること(そもそもインタビュイーを選んだ時点でネガティブになるのは予測できていた)など、ふむふむな内容でした。
電話が終わったのは9時過ぎ。
上司さんには終始紳士的な対応をいただき、翌日、再度顔を合わせて打ち合わせをすることになりました。
ギャラ2割増しで契約継続!!
さて翌日・・・
打ち合わせに行くと、横柄君は平謝り。上役は、打ち合わせに自分が同席することを条件に、今後も仕事を継続してもらえないかと打診されました。
しかも、これまで不要な手間をかけていた分ということで、費用は2割増し。とてもよいお取引を続けました。
この「事件」は2年前のこと。この後も仕事は継続し、この秋、上役が退職されるということで、私もお取引を終了させていただくことになりました。
夜に上役に電話をするのは常識がない行動ですが、何でもかんでも我慢すればいいというものではないと私は思っています。そこで「もうやめます」というのはひとつの解決策かもしれません。実際に、多くの人がそうしているでしょう。
でも、時には筋を通してもいいのではないかと思うのです。私のもとには、ライターやデザイナーなど、複数のサポーターがいました。この件は、私だけの問題ではなく、大切なサポーターたちの仕事ぶりにもかかわるものでした。
言ってよかった。
それが素直な感想であり、私のそれからの仕事スタイルを方向づけた一件でもありました。