思秋期ライターの備忘録

気付けばフリーランス歴18年。インタビュー人数1000人オーバー。48歳の不健康女、原田園子が好きなことだけを勝手に書くBlog

中央区立泰明小学校のアルマーニ制服採用がすばらしいと思う5つの理由

銀座にある泰明小学校がアルマーニ監修の制服を導入したことがマスコミを騒がせいる。
私はこの報道に疑問を感じるし、批判的なことを言っている人も、自分の知ってる公立小学校をあてはめて考えるのではなく、まずは背景を知ってから判断してほしいと思う。

もちろん、「普通の公立小学校にアルマーニ」が普通の学校であれば大問題。買えない家庭が出てくるし、それを排除するのは公立校としてやるべきではないと思う。それでも私は、泰明小学校は賢い選択をしたと考えている。その理由を書いていく。

 

理由1 選ばれて通う小学校

泰明小学校の児童数は335人(学校教育情報サイトより)。3年生は48名だが、それ以外は各学年60名弱が通学している。各学年2クラス、合計12クラスあるわけだが、この小学校の学区は「銀座1~8丁目」(町内でも一部は違う小学校)。誰でもわかるだろうが、ここに多くの子供が住んでいるはずはなく、ほぼ越境で成り立っている。

具体的な越境者人数は発表されていない(と思う)が、区内に4つある「特認校」のひとつで、ここは希望すれば学区に関係なく誰でも入れる学校だ(説明会参加とか、自力で通学できるなどの緩い条件はあり)。逆に言えば、そうしなければ生徒が少なすぎて成り立たない学校だといえる。

越境してまで選んでもらうには、それなりの条件が必要となる。仮に、銀座に子供がいないだけで、他の学校はあふれんばかりの小学生がいるのであれば問題はないのかもしれない。でも、中央区自体に小学生が少ない。泰明小学校の近くの小学校の児童数は以下になっている。

 ・城東小学校 127名(6クラス・特認校)

 ・京橋築地小学校 287名(11クラス)

 ・明石小学校 313名(12クラス)

ども学校も各学年2クラスしかない。この中で選ばれるためには、個性が必要となる。

 

理由2 他の小学校が近い

地域によっては、小学校と小学校の間が離れているところも多い。そのため、「越境すると遠い学校に行かされてかわいそう」という人がでてくるが、超都心の小学校事情は全然違う。

私は渋谷区で子育てをしてきたが、息子の通っていた小学校と隣の小学校は徒歩5分もかからなかった。自転車なら2分で行けてしまう。

中央区も似た環境で、さすがに5分とはいかないが、泰明小学校から1キロほど歩けば、いくつかの公立小学校にたどり着ける。ゆえに、「越境は遠い」という理論は成り立たない(そもそも学区内に子供がいないのだが・・・)。

 

理由3 就業援助費の支給対象者がいるのか?

中央区には、就学援助費の支給対象となる「要保護、準要保護児童」は、13.19%にあたる577人(2014年度文部科学省調査)いるそうだ。だが、577人のうち、泰明小学校の学区内にどれだけの子がいるかは発表されていない。

一般的に考えて、銀座に住んでいる子供は圧倒的に少なく、その中に就業援助費の支給対象となっている子が何人もいるとは考えにくい。

ゆえに「通えない子がいる」という理論が成り立つのか疑問だ。越境がデフォルトなのだから、「通えない子は他を選べばいい」というだけの話だ。

 

理由4 私立のような公立があってもいい

 

私は前述の通り渋谷区で子育てをしてきたのだが、多くの子は中学から私立に行こうとする。都内でも地域によって事情は違うが、超都心ではその傾向は強いと言われ(公立校行っても児童が極端に少ないし)、中央区でもお受験は多い。

そんな中で公立校が生き残っていくためには、何らかの個性が必要となる。「公立校だから」とあぐらをかいていれば児童が集まらず、学校教育が難しくなる。

実際、公立校はいろいろな取り組みをやっている。小中一貫もその典型的なひとつの例だろう。中央区の例ではないが、英語強化、理数強化といった授業内容にまで影響を及ぼす取り組みをやっているところもあり、保護者にも指示されている。

もちろん、そこしか選択肢がない環境でこれをやれば問題だが、「いやなら他を選べる」環境では、歓迎されることだ。公立校なのにアルマーニの制服を着て、厳しいしつけや立ち居振る舞いを教育される学校なあるなんてすばらしい。「自由闊達な子供を育てたい」という人は、他の学校を選べばいいだけの話ではないのか。

 

理由5 都合のいい「子供が置き去り」論理に感じる疑問

今回の記事でも、「子供が置き去りになっている」と書かれているが、そもそも多くの生徒は親が学校を選び、越境させて通学させている。仮に子供が「泰明小学校に行きたい」と行ったとしても、それ以前に親の意思が働いていたはずだ。

歴史的な建造物(東京都選定歴史的建造物及び経済産業省近代化産業遺産に指定)の学校に通わせたかったのか、有名人を輩出した学校に行かせたかったのか、銀座という響きにステイタスを感じたのかは知らないが、そもそもその時点で親の何らかの意思が大きく作用していたはずだ。にもかかわらず、自分に不都合なことが出てきた途端に「子供が置き去り」という正義をかざされるとモヤッと感を払拭できない。

 

泰明小学校の親御さんに直接話を聞いたわけではないが、多くの人が抱えている怒りや疑問は、「ギリギリになって発表された経緯」や「説明不足の現状」についてではないかと思う。実際、今回の発表のタイミングはまったくダメダメだ。そこについての責任はとってもらいたい。標準服変更の取り組みが説明力不足によって、本来とはずれた観点で議論されることは、実にもったいない。

そもそも、「標準服が高い」というのは事実であり、それを口にする人はいるだろうが、「だから学校に通えなくなる」という人はいないはずだ。なぜなら、標準服は新入生から適用されるものであり、現行の児童がみんな買い換えるものではないはずだからだ。新入生は、選ばない権利がある。

数件のクレームがあったというが、政治と同じで全員が満足できることなんてない。クレームの声は大きいし、その中にはモンスターペアレンツも含まれているかもしれない。でも、泰明小学校と中央区教育委員会はそれに負けないでほしい。

そもそも泰明小学校は特認校なのだから、満足できる人だけが行けばいいのだ。それを一般の公立校と同じ基準で議論すること事態がナンセンス。そこをゴチャっとまぜこぜにして議論をするのは間違っている。

日本に「私立のようなド勘違いレベルの公立校」があるなんておもしろい。賛同する人は多いはずだ。