面倒なので、ゆがんだ自分的AI論をビジネスの場で語るのはやめてほしい
最近、AIの話がよく出るんだけど、多くの人は勝手なイメージでAI像を作っている。例えば、「ニュースでやってた」「誰かが言ってた」レベルの情報源で。その結果、分かった風な会話をしてくるんだけど、けっこうズレててめんどくさい。
自分的AI論に賛同を求められて困惑する私
私は最近、IT系の取材が増えていて、いろいろな話を聞く。クライアントのひとつは、AIを使ったシステムを提供している会社なので、必然的に知識はついてくる。でも、それを積極的に話そうとは思わない(というか、横文字オンパレードの会話は疲れるお年頃)んだけど、仕事の話になると、欠かせないキーワードになってるのも事実。
とはいえ、内容は大したことなくて、「それって、数年後にはAI化されますよね~」みたいなレベルなんだけど。
でも、AIと聞いた途端にスイッチが入って、急に「自分的AI論」を語りだす人が多い。それを見て、「やっちまった~」と思うんだけど、大抵は手遅れなんだよね。
なぜ「やっちまった」なのかと言えば、そうゆう人の話の多くは「単なる機械化」であって、AIの特性は無視してるし、むしろ、AIを活用すべき点は、「人間がやるべき」と主張するんだよねぇ。
なぜだ…
人としての存在を守りたいという防御本能か?
でもまぁ、それはいい。私だって詳しくないこと、知らないことの方が多いし、AIだってさわりしか知らない。百歩譲って、語るのはいいの。
でも、問題は、「私は~って思うんですよ。そうでしょ!」って全力で賛同を求めること。そういわれると、「いや、そうではなくて…」と言うしかない。だって、過去にめんどくさくて「そうですよね~」って言ったことが、「原田さんもそう言ってた」的な話になっててビックリしたことがあるし…。
AIは莫大な知識を持ち、客観的は判断をするのが得意
最近は、医療系の話で、こんなのがあった。
「症状を聞いて、その人にあった薬を処方するのは人にしかできないこと」と言い切る案件。
「漢方は、症状に合った薬を処方する」という会話だったんだけど、これこそ機械化できるし、AIを導入すればより確実な処方が可能になるんだよね。
これを話した人は、「症状を聞き出すのは人にしかできない。そのうえで、最適な薬を考えるのも人にしかできない。ゆえに漢方の世界は人がやるべきであり、AIなんかにできるはずない(と願っている)」という前提があるんだと思われる。
でも、症状を聞き出すのは、チェックリストを使えばいい話。微妙な回答もくみ取れるように、「Yes」か「No」で答えるのではなく、「なんとなくYes」「ちょっとNo」みたいな答えも入れておけばいい。
いや、IBM Watsonとか使えば、「最近体がだるくてやる気もなくて…」って話すだけでOK。話し言葉を理解してくれる。
しかも、「次に聞くべき質問はコレ」というのはAIが得意とするところ(学習させんといかんけど、説明がめんどいのでそこは省略)。しかも、次の質問を決めるのは「薬剤師の勘や経験」ではなく、データに基づいたものだから正確。
経験はちょっと面倒な部分があって、「思い込み」が入ってくるので、実は客観性に欠けることが多い。言い方を変えれば、誘導尋問みたいになってしまうことが多んだよねぇ。
しかも、人が覚えられる知識ってかなり少ないというのも厄介。AIであれば、漢方薬の辞書をまるっと覚えて回答を出す。ここは、AIと張り合ってもしょうがない部分なんだよ。
特殊なガンも冷静に判断できるAI
実際、西洋医学では、このAIの特性を活かそうとしてる。西洋医学の例になるけど、ガン治療の分野では、特に動きが盛ん。なぜなら、世界中の論文や治療データを覚えさせることができるし、そこから最適な回答を導き出すことができるから。
ガンって、一般的なもの以外に特殊なものも多いんだけど、データが少ない上に、発生率が低いガンに出会える医者は少ない。そのために、例外的なガンについては正しい診断ができず、最適な医療を提供できないんだよね。そこで、AIを使って正しい診断をしたり、それに最適な治療を見つけ出そうという動きが必要になってくる。
「がん治療にAI活用」ってニュースを見ると、医者の代わりにロボットがレーザーか何かで診断をして、手術台に寝かされたら自動車工場のアームみたいなのでお腹を開くのをイメージする人がいるんだけど、んなわけない!
AIは人をサポートするものというのが正解
話を戻すけど、こうゆう話をすると、「じゃぁ、漢方の薬剤師なんていらないじゃん!」ってなんだかムキになるケースが多いんだけど、そこは違うんだよ。
もう一回言う。
そこは、違うんだよ!!
AIがやるのは、膨大なデータを参照して、「最適な回答を導いてくる」のであって、それを「実際に採用するかどうかを決定するのは、あくまでも人」。さらに、導き出した答えを患者に分かりやすく説明するのも人。ただし、その説明を最適に行うためのカンペはAIがやってくれる。
AI化って、「なんでもかんでも自動化して、人の仕事を奪ってしまう」ってところにばっかり目が生きがちだけど、あくまでも「効率化」をするのであって、「無人化」するものではない(結果的に、無人化できることもあるけど)。
例えば、漢方の例で言うなら、人の経験と知識に頼っている限り、ベテラン薬剤師にしか最適な薬剤の選択ができないことになってしまう。でも、AIを導入してベテラン薬剤師の経験と思考を代行させられれば、新人薬剤師でも、的確な処方ができるわけ。しかも、カンペが出てくれば、説明も問題ない。
もちろん、AIが今後進化して、「人なんかいらないよ」って映画のような世界になってしまう可能性もゼロではないんだけど、現在のところ、「AIはマンパワーを最大化するための最強のツール」でしかないわけ。
「AIに人が排除される」って考えは、映画の世界。
(未来のことは分からないけど)とりあえず、妄想をまじめな話に持ち込むのはやめて~。