思秋期ライターの備忘録

気付けばフリーランス歴18年。インタビュー人数1000人オーバー。48歳の不健康女、原田園子が好きなことだけを勝手に書くBlog

ディレクターに「取材で業界用語とか使わないのは変」と言われたので、ここで反論しておきます!

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最近、取材案件が増えています。私は、取材では専門用語、業界用語を徹底して使いません。そして先日、それを「変だ」と言われました。というより、「お前、知らないんだろ」的言われようだったので、この場を借りて、「それは、私の取材テクなんだよ!」と主張させていただきます( ゚Д゚)

 

急に取材に口を挟んできたディレクター

ことの発端は、あるIT企業の取材。数回会ったことがある程度のディレクターが同行となりました。ただし、その会社からは継続的にお仕事をいただいており、私の納品物はいくつも見ていると言ってました。

取材テーマはここでは書きませんが、「時代の最先端」とか「次世代」とかのキーワードがやたらと出てくるような内容です。そこそこ難しい…

取材時間は1時間でしたが、そのディレクターは後半になってバンバン口を挟むようになってきます。挟むというか、私が言葉を発する上にかぶせてくるのでやりにくさハンパなし。

でも、私も大人なので、「あははは…」と場を和ませつつ取材を終わらせました。そして、その後、「記事の方向性を確認」という名のお茶タイムでの話です。

 

 取材後のカフェで、ひとりヒートアップ!

「原田さんて、この業界のこととか結構知らない感じっすか?」

といきなり、とんでもない言葉を浴びせかけてくる30代男子。しかも、けっこうな語調! 予想外の先制攻撃に、かなりひるんだ私は、「え?あ・・もごもご」となってしまった。

これを「攻撃が効いてる」と思った30代男子は、さらに言葉をスピードアップ&ボリュームアップし、

「取材で業界用語とか使わないのが変。というか、先方に失礼!」

 

ん~。君は若い。

ゆえに、感情のコントロールがまだへたくそなのかもしれない。

でも、静か目カフェで、アラフィフのおばちゃんに向かって、その声のボリュームと語調は、結構カッコ悪いぞ。ってか、おばちゃんは静かにコーヒーを飲みたい(*´Д`)

最初はそんな風に考えながら、ふんふんと聞いていたのですが、ついにこんな言葉が。

「原田さん、結局IT業界のことわかってないし、この業界で誰もが使う言葉を知らないんでしょ」

若者よ。それは事実だ。でも、夏の暑さに気力と体力を奪われていない私だったら、さすがに激しく反論するくらい失礼な言い方だよ。

 

新しい言葉は意味があいまい。しかも、それに気づいていない

この若者が言うように、私は取材ではやむを得ない場合を除き、本当に専門用語を使いません。それは、本当に言葉を知らないというのも事実です。が、その真意は別にあります。

IT業界は特に、技術開発とともに、新しい単語がバカスカに誕生します。でも、新しい言葉ゆえに、万人が正しく理解しているとは限りません。使ってる方も、聞く方も。

 

分かりやすく、身近な例を上げましょう(IT用語ではありませんが)。

例えば、ニュースでも耳にするようになった「インバウンド」。「訪日外国人旅行」という意味と「企業側から働きかけるのではなく、顧客からの問い合わせを受ける」という意味があります。

ゆえに、「インバウンドマーケティング」というと、「外国人旅行者を集めたい」のか、「顧客から問い合わせが来るようにしたい」のか分からず、そこを誤解してしまうと、とんでもないことが起こります。

もうひとつ。首相も大好きな「アジェンダ」という言葉。最近、「それについてはアジェンダを提出します」なんて言われることもあります。アジェンダとは、「計画とか予定表」程度のこともあれば、「協議事項」まで含めることもあります。

そのため、打合せで「アジェンダを提出します」と言われても、単なる計画表が1枚ピラッとでてくるのか、協議内容までしっかり決まった資料がでてくるのかはわかりません。

ところが、多くの人は、自己解釈が正しいと思っているのでわかったつもりになってしまいます。そして、後日、「なんじゃこりゃ~」になるわけです。

 

分かったつもりほど危険なものはない

そしてもう一つ。

こちらが専門用語を使うと、相手は当然のように専門用語のオンパレードになります。

ライターの仕事は、ターゲットに内容を理解してもらうことが最低限の仕事です。「カタカナばっかりで何が書いてあるのか分からない」では話にならないので、読者ターゲットにあったレベルの言葉を使って原稿を書きます。

ここで、専門用語使いまくりの取材をした場合、ライターが「和訳」して執筆するわけですが、上記のような独自解釈の翻訳をしてしまうことで、正しい原稿が書けなくなってしまいます。

残念ながら、この若きディレクターは、典型的な誤訳タイプなわけです。

「専門用語を使わないと先方に失礼」と言っていましたが、後日、「アジェンダってこの程度?」という展開になる方が失礼さが高いわけで、そこは中学生でもわかる平易な言葉でやり取りをしておけば誤解は生まれにくくなります。

 

 

そもそも、何度も仕事をしている私に指名を出した時点で、どれくらいの知識量かは分かるはず。本当に何も知らないなら、これまで書いてきた原稿もハチャメチャなはずで、そんなライターに発注を出すか!って話。私がバカなら、お前の会社はもっとバカってことになるんだけど、そこまで考えられないよねぇ(笑